人生で、私にドラマを与えてくれた人

【あの日、あの時、あの場所で君に会えなかったら、僕らはいつまでも見知らぬ2人のまま】
今日も頭の中でグルグル回っていたのは、小田和正ソング。
あれから数十年の歳月が流れ、四半世紀を生きてきた私は、どうやら更年期にさしかかってきました。
あの恋を懐かしく思えるのは、歳を重ねた証拠。
生涯で一番好きになったあの人、元気にしているだろうか?
私達の出会いは、大学の学園祭でした。
学園祭前日、姉から「私のケーキ、黙って食べたでしょ、許す代わりに合コン繋いできてね」と条件を突きつけられ、気乗りのしない私でしたが、友達4人と大学の学園祭の門をくぐりました。
工学部を通り抜けようとしたその時、1人の面白そうな学生が、このテントの中に入ってみない?と呼び止められたので、恐る恐る入ってみたら、おかまを演じている男達がいました。
次の瞬間、「あなた、何のみたい?お酒あるわよ。私が美味しいカクテル作ってあげる」と妖艶な演技で私に近づいてきたのです。
またまた、次の瞬間、目がバチっと合い、とうとう私はキュン死してしまったのです。
名前はT君。この人の素顔を見てみたい!そう思った私は、T君のお家におじゃますることになりました。
お部屋に入ると、シンプルなインテリアで、掃除の行き届いたキレイな空間でした。
その日以来、私達は、電話で連絡を取り何度かお家にも遊びに行ったり、なかなか良い雰囲気でした。
そんなある日、T君が「イギリスに留学することになった。半年から一年行ってくるよ」と。
寂しかったけど、応援したい気持ちもあり、私は「頑張ってね、手紙書くから」と言葉を残し、この場をあとにしました。
T君が留学中、私達はたった一度だけ、エアメールのやり取りをしました。
「日本では夏の到来かな?今、日本食が恋しいです…」と美しい文章で私を泣かせてくれたのです。
一年経って、T君は日本へ帰国しました。そして、T君と会うことになった私は、高揚感が止まらず、そわそわしていました。
いよいよご対面。喫茶店で待ち合わせをして、到着。
「お帰り、元気だった?」声をかけたその瞬間、そこには一皮向けたT君がいました。私にとっては、すでに雲の上の人になっていて、会話中も緊張から自分の気持ちを思うように伝えられませんでした。
結局、T君は外国で知り合った女の子を好きになり、私は見事、振られてしまったのです。
歳を重ねた今でもT君を好きでいられるのは、本当に人を好きになるということや、人生のドラマを与えてくれた人だからです。
その光景が、今では懐かしく、セピア色に輝き続けているのでしょう。